僕はゴブリンのことを、心のどこかで見下していたのかもしれない。まさか洞窟に落とし穴が仕掛けられているなんて、思いもしなかったんだから。僕は見事にその罠にかかり、足をくじいてしまった。本当に情けない。 でも、怪我の功名があった。穴の中で見たことのない装備品を見つけたんだ。……僕って本当は、運が良いのかも?
肝試し感覚で「夜に探索してみよう」なんて言った僕が間違ってた。アンデッドが夜にこんなに活動的になるなんて、なんで誰も教えてくれなかったんだ? ……それに、初めて見る奴もいる。明らかに強そうだし、僕たちでは敵わないだろう。こういう時にするべきことは一つ。ひたすら、逃げるんだ!
何日もこの草原で過ごしていて、僕は気がついたんだ。いつもナワバリ争いをしているオークとウェアウルフだけど、昼にはオークが、夜にはウェアウルフが優勢になるんだ。毎日毎日、攻守交代しながらナワバリを奪い合ってる。どちらが勝つわけでもなく、たぶんこれからもずっと彼らは争い続けるんだ。 ……なんだかちょっと、かわいそうかも。
砂漠のうだるような暑さは確かに辛いけど、それよりも砂の上が歩きづらいことの方がずっと厄介だよ。僕なんて、何度足を取られて転んだことか。 でも、転んでわかったこともある。それは、アキーク砂漠の赤い砂がとっても綺麗だってことだよ。鈍く輝いていて、まるで宝石みたいなんだ。そして、転ぶたびに砂粒を見ていたら不思議なことに気がついたんだ。中には、本当に赤い宝石、なんていうんだっけ、ガーネット? みたいに赤く輝く透明な石があったんだ。 これは、きっと価値があるんじゃないかな? 次の町に着いたらすぐに鑑定してもらおうっと。
なんだかカッコいい三角の建物が見えたから入ってみたけど、いったい何が目的で建てられたものなんだろう? 中に人はいないし、入り組んでるし、アンデッドもいっぱいいる。でも不思議なことに、薄気味悪いのに、少し神聖な感じもするんだ。なんだっけ、この感じ? ずっと昔、僕は似たような感じの場所に行ったことがある。 あれは……そう、思い出した。……おじいちゃんの葬式の後に迷い込んじゃった、大聖堂の霊廟だ……。もしかして、この大きな建物ってお墓……?
森の中を歩くのがこれほど大変だなんて、想像もしてなかった。太陽も月も隠れちゃうと薄暗くて方角もわからないし、どれだけ歩いたのかもわからないから終わりが見えないんだ。もしかしたらこの森に終わりなんてなくて、僕は一生歩き続けないといけないのかもしれない。 でも、わかったこともある。この森の魔物は僕たち人間を恐れている。だから、堂々と歌を歌いながら歩いた方がいいんだ。みんな最初は恥ずかしがってたけど、今ではまるで合唱団みたいだ。さて、明日は何を歌おうかな。
長閑な平野だからって、魔物も呑気な性格をしてるとは限らないんだね……。まさか町の近くにある、こんなに普通っぽい平野で全滅するなんて想像もしなかったよ。自警団の人たちが来てくれなかったら、本当に危ないところだった。 僕ってやっぱり、まだまだ未熟だったんだ。……強く、なりたいな。
ああ、船の上に寝転んで青空に浮かぶ雲を眺めるのは楽しい。……海賊に縛られて、身動きが取れない状態じゃなければの話だけど。 僕はいったいどこに連れて行かれるんだろう? まさか、このまま売られちゃうとか? ああ、僕はなんて愚かなんだ。そのことに初めて気がついたよ。 どうしたらこの最悪の状況を打破できる? 考えろ、気づくんだ。いつもみたいに、僕自身の気づきを信じるんだ。 ……あ。……そういえば、海賊が言ってたっけ。この空だとじきに嵐に突っ込みそうだ、って。嵐の中なら、海賊たちを一人ずつ制圧していくこともできるかもしれない。あまり良い気づきとは言えないけど、やるしかない。大丈夫、僕はもうただの新米じゃない。ちょっと経験を積んだ新米だ。海賊なんかにやられないさ。